研究概要 |
今年度は咽頭腔の一部である梨状陥凹に関する基礎データを収集した.使用したエックス線機器はCone beam CT装置(CBCT)CB MercuRay(日立メディコ株式会社)である. 被験者は嚥下障害を訴えないボランティア10名である.被験者のフランクフルト平面を床と平行になるよう位置づけCBCTで撮影した。安静時での撮影を行うため唾液嚥下を指示して約10秒後にCBCT撮影を行った.次に被験者にできるだけ右を向くよう指示し,同様に,唾液嚥下指示後約10秒後にCBCT撮影を行った.撮影条件は電圧100kV,電流10mA,スキャンスピード9.6秒/360度である.得られたデータは3次元画像計測ソフトVGStudio MAX1.1(Volume Graphics GmbH)を用いて解析した.解析項日は垂直座位,右向き座位での梨状陥凹腔の容積,断面積,深さ,上縁,下縁の位置,頸椎の傾斜角度,頸部の回旋角度である.梨状陥凹腔と梨状陥凹のしきい値決定は梨状陥凹下の軟組織および気管内空気の中間値とした.梨状陥凹の定義は披裂喉頭蓋ひだが咽頭壁に接触するスライスを上縁とし,最下点を下縁と定義した.また上縁でのAxial面における梨状陥凹の断面積およびSagittal像での第二頸椎前下端と第四頸椎前下端を結ぶ線と水平線とのなす角度を計測した(Angle1).頸部の回旋角度としてAxial像で喉頭蓋喉頭面中央と披裂間切痕を結ぶ線と矢状線とのなす角度(Angle2)を求めた.また第二頸椎から第五頸椎までの各頸椎下端間の距離についても計測した.梨状陥凹上縁および下縁の位置と第二,第三,第四,第五頸椎前下端を通るスライスとの距離を計測した.Angle1は垂直座位が平均92.7度,右向き位は平均93.5度でありほとんど変化がなく,Angle2は平均38.2度であった.梨状陥凹は右向き時,左右梨状陥凹の容積が深くなり,断面積も左の梨状陥凹が広くなった.深さも左右ともに深くなった.頸椎は右向き時回旋しているものの,前後的位置はほぼ変わっていないことから,頸椎を基準として上縁下縁の位置を調べた.それらはともに右向き時に上昇していることが明らかとなった.
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