研究概要 |
本研究は,in vitroおよびビーグル犬を用いたin vitroでのう蝕様脱灰象牙質におけるレジン接着機構を解明し,モディファイド・シールド・レストレーションを発展させた新しい脱灰象牙質再石灰化療法の確立を目指すとともに,象牙質・歯髄複合体の真の再生を目的とした修復システムの確立を目指すものであった。その結果,以下に示す1〜6の知見が得られた。 1,in vitroにおける脱灰象牙質に対するレジン接着メカニズムを検討し,脱灰象牙質に対してはレジンモノマーの浸透性向上が接着性向上につながることを示した。 2,フッ素除放性ボンディング剤による脱灰象牙質の再石灰化についてin vitroで検討しボンディング剤から放出されたフッ素により脱灰象牙質の再石灰化が向上することが示された。 3,フルオロアパタイトを即時に折出できる試作再石灰化溶液によるレジン象牙質接着性への影響について検討した結果,微小引張接着強さを低下させることなく象牙質の再石灰化が可能であることが示された。 4,EVAにコラーゲンを固定化したフィルムにおける歯髄培養細胞の動態を検討した結果,このフィルム上で歯髄細胞は良好な増殖能を示した。 5,成長因子であるCTGFによる歯髄細胞での蛋白発現を検討し,CTGF刺激によって歯髄細胞は活性化されることが明らかとなった。 6,コラーゲン固定化EVA配合プライマー,ハイドロキシアパタイト配合プライマーや生体吸収性創傷被覆材を使用したビーグル犬によるin vitro実験では,露髄部にスペースを確保すれば象牙質再生が可能となることが示唆された。 これらの知見から,我々は今後の展開としてう蝕象牙質に対する新しい接着性修復材料を開発し,露髄症例に対する象牙質再生療法を開発していく予定である。
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