研究概要 |
申請者らはこれまで,試作チタン二元合金とチタン専用陶材の陶材焼付強度および,それぞれの昇温・冷却時における熱膨張収縮を測定、陶材焼付用合金としての適性を分析検討してきた.その結果から試作合金の中にはチタン専用陶材との熱膨張収縮の適性が不十分で,陶材焼成後の変形の原因となっていることを明らかにしてきた.また,チタン合金の引っ張り強度,伸び,切削性などの理工学的性質に関する共同研究者らの研究結果を併せ総合判断すると,チタン二元合金の合金要素として金,銀,銅が陶材焼付け用合金としての可能性が大きいことが判明してきた. そこで,チタンと金,銀,銅それぞれの二元合金に絞って本研究を進めることにし,また,これまで研究を続けてきたチタン用陶材(Noritake super TAITAN)が製造中止となったため,今後の研究は陶材としてVITA TITAN Porcelainを用いることにした. 本年度は,VITA TITAN Porcelainのオペーク,デンチン,エナメルの各陶材について,ISO9693規格に準じた方法で,昇温・冷却時における熱膨張収縮曲線を測定,分析し,ガラス転移点(Tg),ディラトメトリック軟化点(Tm),熱膨張収縮の各係数(TEC, TSC)などの基本的データを求めた.その結果,VITA TITAN Porcelainのデンチン,エナメル陶材のTgは565〜575℃,Tmは650〜665℃,TECは8.1〜8.2×10^<-6>/℃,TSCは8.4〜8.5×10^<-6>/℃であった.これまでの本研究の結果によるTECは,純チタン(CP)が9.5×10^<-6>/℃,Ti-5or10wt%Cuは9.8×10^<-6>/℃,Ti-10wt%Agは10.0×10^<-6>/℃であったことから.TECに関してみると本陶材は以前の陶材(Noritake super TAITAN;7.1〜7.3×10^<-6>/℃)より値が大きく,純チタンおよびチタン合金により近似しており,チタン合金用陶材として十分な熱膨張係数を持つことが示された.
|