研究概要 |
オクルーザル・スプリント装着に伴う口腔環境と機能的変化が、脳神経に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、MRI装置を用いて脳機能の評価を行った。被験者は4名の成人男性(平均28.3歳)で、それぞれに調製したオクルーザル・スプリントを7日間装着させ、装着前、装着日、3日目、7日目、撤去後6日目にガム咀嚼中の脳賦活領域を解析した。また毎回の撮像後に、咀嚼筋活動、咬合力、咀嚼能率、発音、心理検査(STAI)、VASによる違和感などの主観的評価を行い、経日的な変化を記録した。functionalMRI撮像には、東北福祉大学感性福祉研究所のSiemens Magnetom Vision Plus(1.5T)を用い、被験者に30秒間のガム咀嚼と30秒間の安静状態を交互に6回繰り返すbox-carデザインの課題を遂行させて脳領域を撮像した(GE-EPI, TR5000, TE60, matrix64×64, FOV256mm, 32slices)。得られた脳画像はSPM99を用いて処理(頭部動揺の補正、脳の形態的標準化、平滑化、統計検定)した。解析の結果、いずれの被験者においても、オクルーザル・スプリントの有無に関わらず左右側1次感覚運動野、補足運動野、小脳などを中心とした領域で、安静時よりも有意な賦活が確認された。また、全被験者の全ての撮像試行におけるグループ解析の結果、スプリント装着時はスプリント非装着時よりも右側小脳[(26,-60,-28),T=8.22,P(corrected)=0.001]において有意に脳神経活動が高いことが示された。さらに、いずれの被験者においてもオクルーザル・スプリントに対する順応の様相と推察される賦活領域の経日的な変化と、咬合力、咀嚼能率、発音、心理検査の変化が観察されたが、その変化には一定の傾向は見出せなかった。
|