研究課題/領域番号 |
15390590
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
渡邊 和子 岐阜大学, 大学院・医学研究科, 講師 (40158621)
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研究分担者 |
加藤 則廣 岐阜大学, 医学部附属病院, 助教授 (40224521)
兼松 雅之 岐阜大学, 医学部附属病院, 助教授 (40252134)
藤田 雅文 岐阜大学, 大学院・医学研究科, 講師 (50021449)
藤原 周 朝日大学, 歯学部, 助教授 (50229069)
久保 金弥 朝日大学, 歯学部, 講師 (00329492)
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キーワード | 認知 / 咬合 / 咀嚼 / 海馬 / fMRI / 神経ネットワーク / 高齢者 |
研究概要 |
わが国の少子高齢化速度は世界一速く、深刻な社会問題である。今後は高齢者の健康管理、特に痴呆疾患を先送りできる有効な対策法の開発が緊急課題である。近年、口腔機能と知的機能における関連性が歯科臨床の現場で指摘され、特に高齢者の知的機能と咬合咀嚼が注目されている。本研究では前年度の成果をもとに、fMRI法を用いて高齢者ボランティァの咬合咀嚼刺激と海馬を主軸にした認知能神経ネットワーククとの神経科学的アプローチを行い、高齢者の咬合咀嚼刺激がこの神経ネットワークク活性化に有用であることを実証することを目的としている。 今年度はfMRI法を用い、適・不適正義歯使用下chewing時の海馬と連合野の活動状態マッピングとその定量分析を行い、短期記憶に対する効果を記憶タスクを用いて判定し、以下の成績を得た。 1 義歯が合わないと感じている高齢者ボランティアに対し、歯科学的に適正な義歯を準備し、a.不適正義歯装着時、b.適正義歯装着時におけるchewingによる神経活動の増強程度を比較した結果、適正義歯装着時では海馬の増強度は高く、活性化体積も増大した。また、情報処理・判断部位である前頭前野にも強い活性部位が抽出された。不適正義歯では海馬増強度は低く測定不可能レベルになることもあり、前頭前野活性も顕著に低下していた。 2 適・不適の義歯条件下で記憶タスク想起テスト結果を比較したところ、不適正義歯装着で低かった正解率は、適正義歯装着時には有意に高い正解率を示し、短期記憶の向上が認められた。 3 咀嚼刺激効果による前頭前野の活性をブレインモニタで測定したところ、想起タスク結果と相関するベータ波比率の増加が認められた。 以上のことから、咬合咀嚼刺激は高齢者の海馬神経ネットワークを賦活化し、記憶力向上とその維持に有用な手段となりうることが神経科学的に実証された。
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