研究概要 |
(1)Niイオンがマクロファージ細胞に及ぼす影響を検討する目的で,DNA量測定,活性酸素除去酵素(SOD)活性測定とマイクロアレイを用いた遺伝子発現評価を行った.また,細胞に対するLipopolysaccharide(LPS)刺激の有無も比較した.その結果,LPS(-)条件下ではNiイオン濃度の増加に伴いDNA量が減少しSOD活性量が微増することを確認した.LPS(+)条件下ではNiイオン濃度に依存せずDNA量は十定で,自己DNA防御の細胞周期停留が考えられた.また,LPSはSOD(Mn-SOD(SOD2)主体)の産生を著しく促し,さらに,Niイオン濃度の増加でSOD活性が昂進されることを確認した.DNAマイクロアレイ解析によって多くの遺伝子の発現変動が確認された.それらは主として炎症,活性酸素産生と除去やストレス反応の進行を示唆していた. (2)Ti定量用標準液(1000ppm)を希釈添加しTiイオンを1ppmから5ppm配合するMEM系培地を用いてマクロファージ細胞を2日間培養し,Ti配合量(希釈率)が細胞生存率,SOD活性と炎症性サイトカインTNF-α産生量に及ぼす影響に検討を加えた.その結果,細胞生存率は対照に比べTiイオン配合培地で55%程度まで濃度非依存的に低下した.SOD活性量は対照に比べTiイオン配合培地で2倍前後大きかった.細胞内のTiイオン錯体を消化するためRAW264が活性酸素(O_2^-)を産生し,同時にSODを産生したことを反映すると考えられた.TNF-α分泌は対照でも認められたがTi標準液の希釈率の増加に伴い一度増加し,1/400希釈率で最大となり一転減少した.貪食したTiイオン錯体に対して当初,量依存的に炎症反応性が昂進したもののpH低下がTNF-α分泌を減少させたと考えられた.
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