研究概要 |
(1)培地中のニッケルイオンの増加に伴いRAW264マクロファージ細胞の生存率は低下した。LPS刺激によって活性化したマクロファージの一酸化窒素産生量もニッケルイオン量の増加に伴い減少した。RAW264細胞のDNAマイクロアレイ解析から、ニッケルイオンは細胞周期の停止とアポトーシスを誘導することが示唆された。また、SOD1(活性酸素除去酵素)mRNAの発現を促進することから、ニッケルイオンはマクロファージ内で高濃度の活性酸素の産生を誘導し細胞障害を生じることが示唆された。ニッケルイオンは炎症性サイトカイン(IL-1α、IL-1α、IL-6、TNF、プロスタグランジン)mRNAの発現を促進し、抗炎症性グルココルチコイドmRNAの発現を抑制するため、マクロファージ細胞に傷害作用と全身的な為害作用を惹起することが示唆された。 (2)1ppmチタンイオン配合培地で培養したマクロファージRAW264細胞の生存率は対照に比べ55%程度低下し,SOD活性量とTNF-α分泌量は対照に比べ2倍前後増加した.貪食したチタンイオン錯体に対して炎症反応が昂進したためと考えられた. (3)チタン粉を単分散10μm径に調整し,蒸留水,乳酸とMEM溶液への溶出量に検討を加えたところ、蒸留水中への単分散10μm径チタン粉のイオン溶出量は極めて小さくICPの検出限度以下であった.一方,乳酸中には大量に溶出し15日後の溶出チタンイオン量は9ppmに達した.MEM中へのチタンイオンの溶出量も極めて小さく,0.01ppm程度であった.10μm径チタン粉を配合した培養液中でマクロファージ様細胞RAW264を培養し,貪食過程,細胞生存率とNO産生量に検討を加えたところ、チタン粉を貪食するRAW264細胞の細胞生存率は対照に比べ89.4%であり,NO産生量は対照の91.6%であり,貪食に伴う細胞障害性は低いと考えられた.
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