研究概要 |
口腔内における歯や修復物の摩耗には,様々な摩耗のメカニズムが作用している。これらのことを考慮し,口腔内での歯科修復材料の摩耗挙動を明らかにするために,摩耗のメカニズムが異なる歯ブラシ摩耗と咬合摩耗とを組み合わせ,試験片の同一表面上で交互に同時に作用させる複合摩耗試験を開発し,これを用いて歯科修復用材料の摩耗に及ぼす種々の因子の影響について検討を行った。平成15年度の研究では,咬合摩耗部の咬合圧子の材質と形態が複合摩耗の結果に及ぼす影響を,また平成16年度では,歯ブラシ力,咬合力が複合摩耗の結果に及ぼす影響を明らかにした。このように,摩耗試験ではその試験条件が結果に大きな影響を与えることが明らかとなった。特に摩耗部に大きな力が加わる咬合摩耗では,介在物に砥粒が混入することによって,摩耗挙動が大きく変化することが予想され,咬合摩耗部の介在物の成分が複合摩耗に及ぼす影響について調べることが必要となった。そこで平成17年度では,咬合摩耗部の介在物に細かい砥粒である二リン酸カルシウム,あるいは繊維質であるカルボキシメチルセルロースを成分として混入させたとき,これらの成分が複合摩耗に与える影響を調べた。 17年度に行った研究の結果,咬合摩耗部の介在物に二リン酸カルシウムが含まれると,コンポジットレジンの摩耗体積,最大摩耗深さが含有量に従って増加することが見出された。これに対し,咬合摩耗部の介在物にカルボキシメチルセルロースが含まれているとき,コンポジットレジンによっては含有量に従って摩耗体積,最大摩耗深さが減少することが明らかとなった。複合摩耗に及ぼす介在物中のカルボキシメチルセルロースの影響は,コンポジットレジンによって異なっていた。
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