研究概要 |
歯冠修復において,支台築造法はその後の良好な経過を得るために重要な術式の一つである.支台築造に起因する術後の問題に歯根破折があるが,その対策として残存歯質によるフェルール効果が最も重要であることが分かっている.しかし,矯正的挺出,歯冠延長術などの術前処置ができずに歯冠部歯質高径0mmの失活歯を修復する場合がある.その際の修復法としてCo-Cr合金によるメタルコーピング法を考案し,その有効性を検討することが本研究の目的である. 15年度は,繰返し荷重負荷の影響を検討する前の予備的検討のためにCo-Cr合金による各種メタルコーピング法を施した試料を製作し,静荷重による破折試験を行った.試料の製作にはウシ下顎前歯30本を使用し,根管充填後,ヒト上顎中切歯をモデルとしてCelay system(Mikrona)にて倣い加工により同一形態の歯根試料を得た.その後,ポスト孔形成し,間接法で金属鋳造による築造体を製作,歯根試料に合着した.次いで,Co-Cr合金による各種コーピングを製作,合着し試料を完成した.実験条件は,フェルール0mmでコーピングなし(条件I),フェルール0mmでコーピングあり(条件II),フェルール0mmでコーピングあり,さらにベベルあり(条件III),フェルール1mmでコーピングなし(条件IV),フェルール1mmでコーピングあり(条件V)の5条件とした.完成試料は,静荷重による破折試験に供し,破折強度を比較検討した. その結果,フェルール0,1mmともにコーピングあり(条件II,III,V)がコーピングなし条件(I,IV)より高い破折強度を示し,さらにベベルを付与した(条件III)が最も有意に高い破折強度を示した.したがって,静荷重において,破折抵抗性の点からコーピング法の有用性が示唆された.
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