研究概要 |
キチン・キトサンをリンゴ酸で溶解し,キチン・キトサンゾルを作製した.このゾルは乾燥あるいは液体窒素中で脱水することによってゲル化させることが出来る.しかし,pHのコントロールが困難である.生体内ではpHが細胞活性に対して重要な因子となると考えられる.そこで本研究材料はリンゴ酸で溶解したキトサンゾルのゲル化材であるCaOとZnOを骨伝導材料であるハイドロキシアパタイト粉末に混合し,練成方式の骨補填材とした.その結果,pH値はゾルの酸性と粉末のアルカリ物質により中和され,硬化体のpHは7.6であった.また,圧縮強さは大きくなく,骨と歯肉との間にセットしても咬合圧による歯肉への損傷がないゴム状であった.Ca, P, Znの除放性も認められ骨形成には有効に働くものと考えられた.キトサンの脱アセチル化度によって硬化体の空隙率が異なっており,脱アセチル化度の高いキトサンほど空隙率が高いことが明らかとなった.原子間顕微鏡で観察した結果,脱アセチル化度の高いキトサンを用いることによって網日構造が多く観察された.網目構造が多くなると,圧縮強さは小さくなる傾向が認められた.この網目構造になりやすいゲル化したキトサンは,Znイオン,Caイオンに富んだ部分なのか,それとも他の現象によってゲル化した部分なのかについては今後検討する必要性が示唆された.16年度は,ラット脛骨に脱アセチル化度85%と99%のキトサンゾルを用い,CaO粉末,ZnO粉末そしてハイドロキシアパタイト粉末で合成した混合粉とを練和し,それぞれを埋入し,生体反応について検討を行う.
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