甲殻類から抽出したキトサンは、生体内でCO_2と糖に分解吸収され、抗原性が低い物質である。このキトサンは甲殻類から抽出したキチンを水酸化ナトリウムによって脱アセチル化を行い作製することができる。キチンのままでは有機酸によって溶解しゾルを形成することは出来ないがキトサンはリンゴ酸、マロン酸、アスコルビン酸などの有機酸で溶解し、ゾルを形成することが出来る。このキトサンは脱アセチル化度によって物性が異なり、脱アセチル化度が低い場合には生体内での分解吸収性が高く、逆に脱アセチル化度が高いと生体内での分解吸収性は低くなる。 平成15年度の当研究費を用いたin Vitroの実験を行った。実験は脱アセチル化度85%と99%のキトサンを用いて骨補填材を作製し、圧縮強さ、硬化時間、pH変化、硬化体の組織の観察を種々検討した。その結果、圧縮強さは脱アセチル化度99%で作った硬化体が脱アセチル化度85%の硬化体よりも大きかった。硬化時間に関しては差が認められなかった。pH変化についても両者のキトサンには大差は認められなかった。ついで、脱アセチル化度85%と99%のキトサンを用いた硬化体を8週間生理食塩水中に浸漬後の組織観察を行った結果、脱アセチル化度85%のキトサンを用いた硬化体の気孔率は変化しない結果であった。一方、脱アセチル化度99%のキトサンを用いた硬化体の気孔率は浸漬時間が長くなると増加し、その形態は網目構造を有していた。 平成16年度はこの両者のキトサンを用い、骨補填材を形成しラット脛骨に充填を行った。術後2、4、8週間後の組織観察について検討を行った。その結果、両者の骨補填材は生体内で段階的に分解されている。85%脱アセチル化度は骨と接触してはいるが骨と置換している状態は観察されていない。一方、脱アセチル化度99%のキトサンを用いた場合、骨伝導が認められ、骨と置換している状態が観察された。骨と置換している状態は骨補填材のキトサン部分が網目構造を示している部分において著しく観察された。逆に網目構造でない部位については骨と置換してはいなかった。今後は2〜3週間後に骨と置換が可能なキトサンを結合材として骨補填材の改良を進めたいと考えている。
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