研究概要 |
本研究は,レジンの立体構造(高次構造)を任意にコントロールすることによって所期の物性をレジン材料に付与し,最終的には可塑剤を全く用いずに高性能の軟質裏装材を調製するとの考えに基づいて計画した. 本年度は以下の点に着目し,「モノマーの分子構造」-「ポリマーの高次構造」-「ポリマーの物性」三点について明らかにすることを試みた.第一には,物性制御の自由度を広げるべく,レジンの高次構造を構成する結合種を一次結合のみではなく,相対的に弱くルーズで柔軟な結合である水素結合や静電的相互作用に代表される二次結合を併用した効果に関して検討した.この観点から,UDMAと酸性モノマーから構成される系を構築し,高強度・高弾性とは相容れない物性である高靱性を同時に獲得させたことにより,粘り強さを付与出来ることを明らかにした.第二には,重合性基の違いがレジンの弾性に与える影響を検討し,一般に多用される重合性基であるメタクリロイル基よりもアクリロイル基の方が低弾性レジンとなることを明らかにした.第三には,架橋密度を下げることを目指して,側鎖の嵩だかさの効果を検討し,嵩だかい側鎖を有するモノマーほど低弾性レジンとなり,側鎖の炭素数(n)が0と較べてn=4の場合は弾性率が1/4程度に減少することを明らかにした.この結果は嵩だかい側鎖同士の立体障害によって,架橋構造が疎になったことによると推察された.一方で,in vitro生体適合性試験として自作モデルを用いた生物学的安全性試験の臨床模擬試験(in vitro)についても確立し,生物学的評価の準備も整った. 16年度は本年度に調整されたプロトタイプ材料をin vitro生体適合性試験を用いて評価するとともに,なお一層の物性改善についても試みたい.
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