研究概要 |
インプラントは骨結合に至る過程で,まずその周囲にコラーゲンやプロテオグリカンを主体とした細胞外基質による類骨が形成され,その類骨が徐々に石灰化していく.この石灰化過程では,マトリックスメタロプロテナーゼ(MMP)などのプロテナーゼが作用して細胞外基質の分子レベルでの構造変化が起こった結果,石灰化が営まれる.しかし,MMPのインプラント周囲での骨石灰化過程における働きは不明である.本年度は,インプラント周囲での骨形成におけるMMPの働きをin vitroで調べる目的で,チタン(Ti)上で培養した骨芽細胞による石灰化過程におけるMMP-2,-3,-9,-13と-14の遺伝子発現パターンを検証した.プラスチック(Pl)上で培養した場合,石灰化は培養開始30日後に開始したが,Ti上で培養した場合はそれより10日遅れて開始した.Alkaline phosphataseとtype I collagenの発現もTi上で10日遅れていたことから,Pl上よりもTi上では骨芽細胞の分化とそれによる石灰化は遅れていることが判明した.しかし,石灰化前と後のMMPの発現変化は両材料上で同様のパターンであり,それぞれのMMPで特有なパターンを示した.石灰化前後でのMMP-2,-9-と14の発現量に統計学的有意差は認められなかったが,コラーゲンを分解するMMP-13は石灰化前には多量の発現量を示したが,石灰化開始とともにその発現量が顕著に減少した.一方,プロテオグリカンを分解するMMP-3は石灰化前には少量の発現量であったが,石灰化期に入ると有意に発現量が増加した.この相反的な発現パターンを示したMMP-13-と-3は石灰化前期にコラーゲン構造を変化させ,その後プロテオグリカンを分解することにより,ハイドロキシアパタイトの結晶化とその成長を促している可能性があり,少なくともインプラント周囲での骨形成過程で重要かつそれぞれ特有の役割を担っている可能性が推察された.
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