研究概要 |
本研究の目的は,現在,マウス-ヒト相同染色体領域からのヒト相同遺伝子の同定が可能であること,関節炎の発症を規定する遺伝子群が存在すること,膠原病病変発症の臓器特異性を規定する遺伝子座が存在すること,膠原病の病理組織学的な病像を規定する遺伝子群が存在する可能性があることなどのこれまで明らかとなった研究結果を基に,我々が作出した新しい関節リウマチ(RA)モデルマウスを用いて,RAの顎関節における病態および疾患感受性遺伝子の解析を試み,RAの顎関節病変の早期診断,予後の判定,治療法の開発,予防法の開発などに寄与することである. これまで我々は,膠原病好発系MRL/lprと嫌発系C3H/lprマウスを交配したMRL/lprx(MRL/lpr x C3H/lpr)F1マウスに足関節の腫脹を示す個体を見出し,このN2マウスを始祖とする兄妹交配系のF44世代から10世代以上にわたり顕著に足関節腫脹を示す個体を選択的に交配させ,早期に関節強直を自然発症する近交系マウスMcH-lpr/lpr-RA1を樹立した.平成15年度においては,このマウスの関節炎の病態解析を行った.その結果,2か月齢(M)の雄(n=17)雌(n=17)の全ての膝関節において骨改造を伴った関節炎を発症し,5Mの雄(n=43)の60%以上に足関節腫脹を,病理組織学的には雄の90%以上,雌(n=20)の40%以上の足関節に関節強直を示した.この系統は,C3H/lprゲノムの導入により,親系統のMRL/lprでは見られない,早期に,かつ高頻度に関節強直を発症する新たな関節炎モデルで,特に骨破壊機序の解析,治療実験に有用であると考える.
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