研究課題
基盤研究(B)
我々はかつて、ヒト組換え型BMP-2(rhBMP-2)を用い、血管柄の付いた移植骨の作製が可能であることを示した。その方法とは、ラットを用い、rhBMP-2を含浸させたコラーゲンを充填したシリコン製の鋳型の中に、血管柄の付いた小筋体を挿入し、鋳型の内腔と同じ形態の誘導骨を作製するというものである。さらに、この方法は、他組織への拡散、漏出などによって身体の各所で起こりうる副作用をあまり考慮する必要もなく、BMPを極力局所にとどめ、高濃度のBMPを効果的に作用させ、かつ賦形性を持った血管柄付き誘導骨をつくることのできるという画期的な方法であった。すなわち、シリコン製の鋳型の内腔の形を変えることによって様々な部位に適合する骨を作製することができる。今回我々はより侵襲が少なく、また採取量も比較的豊富で、また採取部位にはとんど機能障害を起こし得ない脂肪組織に着目した。そして同様の方法にて血管柄付き小脂肪体を用い、異所性骨の作製に成功した。移入する血管を結紮した群ではrhBMP-2を作用させても骨形成は起こらず、むしろその末梢にある脂肪組織は壊死を起こした。一方rhBMP-2の作用なくしては骨形成は起こらなかった。造影剤を血管内に注入してしらべたところ、骨化の起こった群には、造影剤が侵入しており、この異所性誘導骨はその血管柄からの血流によって栄養されていることがわかった。また電子顕微鏡の解析により、rhBMP-2を作用させた脂肪組織には一部、骨芽細胞と脂肪細胞の中間的組織形態を示す細胞もあり、脂肪細胞から脱分化した細胞の存在が示唆された。上記の研究結果は、本研究を進める上で重要な基礎的なデータとなりうるものであり、その知見等も勘案しながら、遺伝子導入実験を進めている。
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