研究概要 |
1.高度浸潤像型口腔扁平上皮癌(SCC)における、E-cadherinの発現消失、ビメンチンおよびMMP-2の高発現、さらに上皮・間葉移行(EMTに関与する転写因子Snailの高発現を見いだした。 2.Snail発現ベクター導入により、SCC細胞は線維芽細胞様形態に変化し、ビメンチンの発現上昇とE-cadherinの発現消失が誘導された。またMMP-2発現がEMTにより制御さることを明らかにした。 3.Wnt遺伝子のSCC細胞における発現について検討した。正常口腔粘膜上皮細胞を対照として10種類のSCC細胞における7種のWnt遺伝子について検討を行った結果、Wnt-1,2,3,6,7aの相関は見られなかったが、β-カテニンシグナルを介さないWnt蛋白であるWnt-4とWnt-5aの発現の逆相関をみいだした。SCC細胞で発現しているWnt-4は高度浸潤型SCCでは消失し、逆にWnt-5aはこれらの細胞においてのみ発現していた。さらに、Snail過剰発現によりEMTを誘導した細胞ではWnt-4消失とWnt-5a上昇を認め、これらのWntがEMTにより変化すること、また口腔癌の悪性度のマーカーになりえることを明らかにした。 4.正常および癌細胞におけるテロメラーゼ活性と関連遺伝子の発現を詳細に検討し、Telomerase Reverse Transcriptase (TERT)遺伝子は、初代培養正常口腔粘膜上皮細胞では発現しており継代にともない低下すること、癌および不死化細胞におけるアルタネートスプライシングを報告した。 5.TERT遺伝子導入により不死化正常口腔粘膜上皮細胞、歯肉線維芽細胞、歯根膜細胞、歯髄細胞、歯乳頭細胞、骨芽細胞を樹立した。不死化正常口腔粘膜上皮細胞と歯肉線維芽細胞を組み合わせた口腔粘膜再構成三次元培養系を確立した。
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