研究概要 |
1.抗癌剤である5-フルオロウラシル(5-FU)とシスプラチン(CDDP)の口腔癌細胞や唾液腺癌細胞に対する抗癌分子機構につき解析したところ、5-FUは癌細胞の転写因子NF-kBを抑制することにより、抗アポトーシス蛋白であるTRAF-2,cIAP-1,cFLIPの発現を抑制する結果、カスパーゼ8やカスパーゼ3を活性化することによりアポトーシスを誘導することを明らかにした。一方、CDDPはNF-kBには影響を及ぼすことなく、ミトコンドリアの経路を介してカスパーゼ9とカスパーゼ3を活性化させ、アポトーシスを誘導することを報告した(Oral Oncol,39:282,2003)。 2.頭頸部癌治療に用いられるCDDPと5-FUの併用療法に関する抗癌分子機構について解析した。その結果、CDDPを先行投与し5-FUを投与する併用療法は、抗アポトーシスに作用するBcl-2を抑制することによりカスパーゼ8を活性化させ、またミトコンドリアからのcytochrome c遊離を促進させる結果カスパーゼ9を活性化させることにより、外因性・内因性経路を介してカスパーゼ3を活性化させアポトーシスを誘導することを明らかにした(Int J Oncol, in press)。 3.口腔癌細胞のNF-kB活性を変異型lkBa cDNAを導入することにより抑制した場合、放射線や抗癌剤に対する感受性の増強が認められことを報告した(Int J Cancer,108:912,2004)。 4.唾液腺導管細胞をDNA脱メチル化剤で処理した場合、水分泌に重要な機能を有するアクアポリン5の発現誘導が可能であることを明らかにした。
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