研究概要 |
1.口腔癌や唾液腺癌細胞においては正常細胞に比較して、転写因子NF-κBの活性が著しく増強していることを明らかにし、頭頸部癌治療においてNF-κBが分子標的となりうることを報告した。そこで、頭頸部癌細胞に恒常的NF-κB抑制因子である変異型IκB-α遺伝子を導入することにより、担癌ヌードマウス腫瘍において腫瘍関連血管新生を抑制し、放射線治療および抗癌剤(5-フルオロウラシル)治療の感受性を増強させることを明らかにした(Int J Cancer,108:912-921,2004)。 2.アルカロイド製剤であるセファランチンは唾液腺細胞において、TNF-αによって誘導されるNF-κB活性を抑制することをすでに報告した(Arthritis Rheum,46:1585-1594,2002)。そこで口腔癌細胞のNF-κB活性におよぼすセファランチンの影響および放射線感受性の増強効果につき検討した。その結果、口腔癌細胞をセファランチン単独処理した場合、NF-κB活性を抑制することにより細胞増殖抑制効果を発揮した。また放射線の腫瘍抑制に対するセファランチンの影響につき検討したところ、セファランチンは放射線によって誘導されるNF-κB活性を抑制することにより、腫瘍関連血管新生因子であるIL-8の産生を抑制する結果、放射線の腫瘍増殖抑制効果を増強することを明らかにした(日本口腔科学会雑誌,54:230-236,2005)。 3.DNA脱メチル化剤であるデシタビンにて唾液腺導管細胞(NS-SV-DC)を処理した場合、発現の認められなかった水輸送膜蛋白であるアクアポリン5(AQP-5)の発現が誘導されることが確認された。この誘導はAQP-5遺伝子プロモーター領域内に存在するCpGアイランドでの脱メチル化に起因していることが明らかとなった(Lab Invest,85:342-353,2005)。
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