研究概要 |
前年度、我々は、p53表現型が正常型として働いているヒト舌扁平上皮癌細胞株SASについて放射線および温熱処理を行い、p53正常型細胞でアポトーシス誘導が起こりやすいことを確認した。その際、アポトーシス関連の遺伝子発現をDNAアレイで解析したところ、X線と温熱で、アポトーシス関連遺伝子の経時的発現量が大きく異なっていることが分かった。本年度は、実際のタンパク質発現を調べるために、プロテインチップを用いて、アポトーシス関連タンパク質の発現を調べ、クラスター解析を行った。 方法は、SAS/neo細胞(正常型p53)とSAS/mp53細胞(変異型p53)を使用し、X線照射(6Gy)、温熱処理(44℃、40分)を行い、12時間後にタンパク質を抽出した。グリセロール処理したものは放射線処理または温熱処理する24時間前にグリセロール処理を行った。タンパク質をcye3,cye5で標識し、microarrayとincubateし、ハイブリダイゼーションした。scanningはScan Array Expressで行い、解析にはDNASIS statとexcelを用いた。非処理の細胞からのタンパク質をコントロールとした。 結果は、P53正常型細胞に放射線処理を行ったものとp53変異型細胞に放射線およびグリセロール処理を行ったものが最も相似したタンパク質発現をしているのがわかった。p53変異型細胞にグリセロールと放射線処理を行ったものはBcl-2やPARPなどのアポトーシス抑制系タンパク質の減少がみられ、温熱処理に最も抵抗性を示したP53変異型細胞にグリセロールおよび温熱処理を行ったものにはMDM2やNF-kBなど多くのアポトーシス抑制系タンパク質の発現を認めた。 今後、これらのタンパク質発現などについてウェスタンプロットなどで確認していく予定である。
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