研究概要 |
TGF-βファミリーのサイトカインは,初期発生や器官形成のみならず腫瘍形成を含めた様々な生命現象に深く関っている.これまでに,我々の研究グループは,アクチビンおよびBMP-2がB細胞に対して強い増殖抑制効果を発現することを見出し,それに関わる細胞内情報伝達因子について詳細な検討を加えてきた.とくに,inhibitory SmadsであるSmad6とSmad7に関しては,アクチビンとBMP-2との間で,その作用機序に違いが認められた.そこで,今回の実験では,TGF-βファミリーのサイトカインとしてGDF-5に着目し,この分子がB細胞に対してどのような働きを示すかについて検討した.まず,GDF-5をB細胞ハイブリドーマであるHS-72細胞に作用させたところ,著しい細胞増殖抑制効果が認められた.さらに,その発現機序を細胞生物学的に解析したところ,G1期での細胞周期の停止とアポトーシスが誘導されることが明らかとなった.加えて,この一連の作用は,Smad6とSmad7により抑制されることが明らかとなった.以上結果から,TGF-βファミリーのサイトカインによるSmadsを介した細胞情報伝達系におけるinhibitory Smads (Smad6とSmad7)の果たす役割は,ファミリミーメンバーによって異なる挙動を示すことが明らかとなった.さらに,そのパターンは大きく2つに分けられることが強く示唆された.そこで,今年度の後半,細胞内情報伝達因子であるp38MAPキナーゼやc-Junなどのリン酸化について調べたところ,興味ある知見が得られた.そこで,次年度,これらの分子の機能をより詳細に検討する予定である.
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