研究概要 |
TGF-βファミリーのサイトカインは,初期発生や器官形成のみならず腫瘍形成を含めた様々な生命現象に深く関っている.これまでに,我々の研究グループは,アクチビンおよびBMP-2がB細胞に対して強い増殖抑制効果を発現することを見出し,それに関わる細胞内情報伝達因子について詳細な検討を加えてきた.H16年度は、TGF-βファミリーのサイトカインであるアクチビンに対する感受性の異なる3種類のB細胞バイブリドーマ(HS-72,LS-1,LS-12)を用いて、アクチビンに対する反応性の違いを細胞傷害試験法およびフローサイトメーターを用いて解析した。 アクチビンは、HS-72細胞に対して、低濃度から細胞毒性を示し、G1期での細胞周期の停止とアポトーシスを誘導するということを報告してきたが、本実験でレチノイン酸単独では、HS-72細胞に対して、若干の細胞毒性を示し、G1期での細胞周期の停止を引き起こすが、アクチビンとレチノイン酸を共存させるとアクチビンの作用が強く増強されることが明らかとなった。LS-1細胞においては、アクチビンおよびレチノイン酸単独では、ほとんど細胞毒性を示さなかった。しかしながら、アクチビンとレチノイン酸を共存させるとLS-1細胞のG1期での細胞周期の停止とsub G1の割合が増大した。 また、LS-12細胞については、HS-72とLS-1細胞の中間型の反応を示した。すなわち、アクチビンに対する感受性の異なる細胞は、レチノイン酸に対する反応性が異なること、レチノイン酸は、アクチビンの作用を増強することから、アクチビンとレチノイン酸のシグナル伝達においてお互いのシグナルがクロストークする可能性が示唆された。
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