研究課題
昨年度は亜鉛欠乏ラットが食塩嗜好性を亢進させていることを明らかにした。本年度は食塩嗜好性の亢進が味覚か、あるいは摂取後の要因に依存するのかを明らかにするために行った実験で、下記の成果を得た。1.行動学的実験:味覚神経を両側性に切断したラットと、偽手術を施したラットに亜鉛欠乏飼料を摂取させ、食塩嗜好性を48時間の2ビン法で調べた。その結果、両群の食塩嗜好度に有意差は認められなかった。またマウスの食塩水に対するリッキング応答は、正常飼料摂取群(正常群)と亜鉛欠乏飼料摂取群(欠乏群)とのあいだに有意差は認められなかった。このことから、亜鉛欠乏による食塩嗜好性の亢進が味覚に依存している可能性は小さいことが示唆された。2.電気生理学的実験:亜鉛欠乏が味覚神経応答に影響を及ぼすかどうかを調べるため、マウスの正常群と欠乏群における鼓索神経応答を電気生理学的手法で解析した。その結果、両群の四基本味(甘、酸、苦、塩味)物質溶液に対する濃度-応答曲線に有意差は認められなかった。このことから、亜鉛欠乏が四基本味の受容系に影響を及ぼしている可能性は小さいと考えられた。3.内分泌学的実験:ナトリウム(Na)嗜好性は血清Na濃度の影響を受け、また血清アルドステロンはNa代謝に重要な役割を果たしていることが知られている。そこで、ラットの正常群と欠乏群における血清Na、アルドステロン濃度を測定した。その結果、正常群のNaとアルドステロンの濃度はバラツキが小さく一定であったが、欠乏群では両者ともバラツキが大きく、しかもNa濃度が低下し、アルドステロン濃度が上昇する傾向がみられた。このことから、亜鉛欠乏ラットではNa代謝異常が起っている可能性が示唆された。
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