研究概要 |
顎口腔系における痛みの生理メカニズムを理解するには、交感神経-体性神経の関連性を考慮に入れた検討が必要である。本研究では、顎口腔系への侵害受容刺激が自律神経系に及ぼす影響、およびその自律神経系が逆に顎口腔機能系に及ぼす影響について、生理学的に検討することを目的とした。本年度は痛覚刺激としてカプサイシン溶液を用い、フィルターペーパー小片に染み込ませ、下顎犬歯部頬側歯肉に貼付した。ペーパーを貼付後の安静1分間、その後ペーパーを取り除き蒸留水をしみこませた綿で軽く歯肉をぬぐった後の安静30分間のデータを記録した。左右の側頭筋前部および咬筋浅部に電極間距離を10mmに固定した小型生体電極を筋の走向に平行に貼付し、咬筋と側頭筋の筋電活動を双極誘導にて記録した。 咀嚼筋の血液動態については、レーザー組織血液酸素モニターを用い、左側の側頭筋と咬筋においてOxyHb,DeoxyHb,TotalHb,StO_2を記録した。皮膚血流については、レーザー組織血流計を用いて左側咬筋部の皮膚血流を記録した。自律神経活動の指標を得るため、心電図を肢誘導心電図にて記録するとともに、非観血式連続血圧測定装置を用いて血圧を連続的に測定した。 以上のデータをA/D変換ボードを介してコンピュータに取り込み、解析を行った結果、カプサイシン貼付時は安静時に比較して筋血流と皮膚血流が上昇すること、また、その変化はカプサイシン除去後もしばらく持続することが明らかとなった。
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