研究概要 |
本年度、我々は過剰な機械的伸張力が培養ウサギ滑膜細胞のヒアルロン酸代謝に及ぼす影響について検討を行った。 4週齢雄性日本白色家兎膝関節より滑膜細胞を採取した後、outgrowth法にて培養し、継代5代目の培養滑膜細胞を実験に用いた。まず、継代5代目の滑膜細胞に対して、線維芽細胞、マクロファージ、ビメンチン、それぞれの抗体を用いて免疫染色を行い、実験に使用する継代細胞が線維芽細胞の性質を有しているかを確認した。次に、培養滑膜細胞に15kPaの周期的伸張力を3,6,12,24,48時間負荷した後、ヒアルロニダーゼ遺伝子の発現およびヒアルロニダーゼ活性を定量PCR、ヒアルロン酸ザイモグラフィーでそれぞれ検討した。また、培養上清中のヒアルロン酸量をELISA法により検討した。 滑膜細胞におけるヒアルロニダーゼ遺伝子の1つであるHYAL2遺伝子発現は、周期的伸張力負荷3,6,12時間後にコントロールと比較してそれぞれ、約1.7,3.5,4.5倍と有意に増加した。また,ヒアルロン酸ザイモグラフィーでは、周期的伸張力によりヒアルロニダーゼ活性が認められ、48時間でコントロールと比較して顕著な増加が認められた。さらに、培養上清中のヒアルロン酸濃度は、時間依存的に増加することが明らかになった。 本研究結果より、過度な機械的負荷は滑膜細胞のヒアルロニダーゼ発現を増強させるだけではなく、その活性を増強することによりOA関節滑液中のヒアルロン酸低分子化と密接に関わっていることが強く示唆された。 今後は、培養上清中のヒアルロン酸の分子量をHPLCにて解析し、実際に低分子化が生じているかを検討する。さらに、ヒアルロン酸低分子化を制御する可能性があるヒアルロニダーゼ抑制因子であるTSG-6やITI(Inter trypsin inhibitor)の発現にも着目し、滑液中のヒアルロン酸の低分子化のメカニズムを解明するとともに、下顎頭軟骨吸収の抑制のための治療体系の確立をめざす。
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