1.歯周治療介入による血漿中LPS、各種炎症性マーカーの変動について 全身疾患を有さず、慢性歯周炎に罹患している非喫煙者17名を被験者とした。全顎のメカニカル・デブライドメントを行った。術前、術直後および術後1ヶ月の血漿LPS、血清IL-6、CRP、LBPのレベルを測定した。 その結果、 (1)血漿中LPSは術前17名中3名で検出された。 (2)血清中のIL-6レベルの平均は術前と術直後、術直後と術後1ヶ月との間に有意差があり、術直後で高かった。血清中のLBPレベルの平均は術前と術直後、術直後と術後1ヶ月との間に有意差があり、術直後で低かった。 (3)血清中のCRPレベルの平均は術前、術直後、術後1ヶ月の3者間では有意差は認められなかった。また、10名中5名の患者で術前に比べ値が低かった。 歯周病患者の血漿中のLPS活性は低く、血流に侵入するLPSは微量かあるいは侵入しても、すぐに、LBPなどによって、不活性化されてしまう可能性が示された。しかしながら、血清中のIL-6レベルは、術直後有意に上昇し、LBPレベルが低下したことから、歯周病変部から侵入する、細菌あるいはLPSが全身に影響することが示唆された。 2.低濃度LPSに対する全血の反応性について 健常者7名から採血し、5pg/mlのAaLPS、3時間の前処理後、1ng/mlのAaLPSを添加し、培養3、6、12、20時間後の培養上清中のIL-1β、IL-6、TNF-α、IL-10レベルを測定した。前処理しないものを対照とした。 その結果、培養12時間後においてIL-1βとIL-6の産生量は、前処理群が有意に大きかった。 歯周病患者で認められる程度の生理的血漿LPS濃度でも、単球に対するプライミング効果を有することが明らかとなり、歯周感染由来の血液中のLPSは全身の免疫炎症反応に影響を与える事が示唆された。
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