研究概要 |
我々は,自己間葉系幹細胞を担体とともに歯周組織欠損部に移植する治療法の開発研究に取り組んでいる.これまで行った動物実験の結果は,術後1か月の評価でセメント質再生,歯槽骨再生が対照群に比べて優れており,幹細胞移植の効果が確認された.そこでMSC移植による歯周組織再生機序をさらに詳細に検討することを目的として,MSC移植後の長期観察とgreen fluorescent protein(GFP)導入MSCを用いて移植幹細胞の動態,さらに,歯周組織再生過程で関与する細胞外基質タンパクの発現について免疫組織化学的に検討した. ビーグル犬の下顎両側第2,3,4小臼歯に実験的3級根分岐部病変を作成し,腸骨骨髄から分離・増殖させたMSCをアテロコラーゲンゲルを担体として,2×10^7cells/mlの細胞密度で移植した.対照群としてアテロコラーゲンゲルのみを移植した.GFPを導入したMSCについても同様に移植を行い観察期間は移植後4週とした.免疫染色の一次抗体には抗GFP抗体,抗osteopontin(OPN)抗体,抗bone sialoprotein(BSP)抗体を用いた. 移植後4週のOPN, BSP発現は,コントロールでは,再生した歯槽骨表面の骨芽細胞および周囲の結合組織中の一部の細胞に認められたが,分岐部直下の結合組織中には認められなかった.それに対し,細胞移植群では,再生した歯槽骨表面だけでなく,分岐部直下の根表面に配列する細胞,結合組織中の豊富な細胞にOPN, BSPの発現が認められた.また,抗GFP抗体を用いた免疫染色では,再生したセメント質表面に配列したセメント芽細胞,再生した骨表面の骨芽細胞,骨内の骨細胞,歯周靱帯線維芽細胞などの歯周組織構成細胞に陽性反応を示した.
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