研究概要 |
我々は,自己骨髄間葉系幹細胞(MSC)を歯周組織欠損部に移植する治療法の開発に取り組んでいる.これまでの本研究の動物実験の結果で,移植後4週で,MSC移植は歯周組織の再生を促進していること,移植したMSCは,セメント芽細胞,骨芽細胞,歯周靱帯線維芽細胞などの歯周組織構成細胞に分化することで歯周組織再生に関わるであろうことを示した.平成16年度は,移植後2週と3カ月の組織観察と細胞外基質蛋白の局在を検討した.また,実験モデルをこれまでの外科的歯周組織欠損モデルから,さらに慢性炎症を惹起させた実験的歯周炎モデルとして,MSC移植の効果を観察した. 外科的欠損モデルは平成15年度と同様な方法で作成した.また実験炎症モデルは,外科的欠損モデル同様,実験的3級根分岐部病変を作成後,欠損部にアルジネートを埋入し2週間の期間観察し,同部歯周組織に慢性炎症を惹起させた. 移植後2週の組織観察では,歯周組織の再生に関して,コントロールと比較して大きな差は認められなかったが,オステオポンチン(OPN),骨シアロプロテイン(BSP)陽性の細胞が多数観察された.分岐部直下は,コントロールでは上皮の侵入が観察されるのに対して,MSC移植群ではOPN,BSP陽性の細胞が認められ上皮の侵入は観察されなかった。また,MSC移植群の根表面は,OPN,BSPに強染した. 慢性炎症モデルの術後4週では,外科的欠損モデルと比較するとMSC移植の歯周組織再生量は見劣りするものの,歯根表面は全面にわたりセメント芽細胞様細胞が認められた.分岐部直下では,未だ歯周組織の再生は起こっていないが,コントロールと異なり上皮の侵入は観察されず,根表面にコラーゲン線維を埋入した像が認められた.
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