研究概要 |
歯周疾患は,細菌感染による慢性炎症性疾患であり,これにより病的な骨吸収が引き起こされている.この骨吸収を抑制することが,歯周病の治療および予防に非常に重要である.骨代謝に重要な骨を吸収する細胞が破骨細胞であり,この破骨細胞の分化に関する細胞内伝達経路が数多く報告されている.この伝達経路をコントロールする事が出来れば,骨吸収をコントロールする事が可能である.我々の共同研究者が,破骨細胞が産生する新規の破骨細胞形成抑制因子(OIP-1,Osteoclast Inhibitory Peptide-1)を発見した.OIP-1のように破骨細胞が産生しオートクラインに自身を抑制する因子は報告されていない.このOIP-1の破骨細胞抑制機序を解明して歯周治療に応用することが目的である.今年度は,OIP-1を誘導する因子のスクリーニングを行った. OIP-1の骨髄細胞および骨芽細胞での発現を調べた結果,マウス骨髄細胞(6週齢雄のddYマウス)の破骨細胞抑制因子であるIFN-γ,破骨細胞形成刺激因子のIL-1β刺激によりOIP-1のmRNA発現の増加が認められた.しかし,破骨細胞形成刺激因子のM-CSF及び活性型VD3刺激では,特に変化が認められなかった.次に,骨形成に重要な細胞であるマウス骨芽細胞(哺乳2日齢ddYマウスの頭蓋骨から採取する)をIFN-γで刺激した結果,OIP-1のmRNA発現の増加が認められた.しかしながら,IL-1β及びM-CSF,活性型VD3,Vitamin A刺激では,特に変化が認められなかった. 以上の結果より,IFN-γによりOIP-1が特異的に誘導されることが明らかなり,OIP-1はIFN-γの破骨細胞抑制機序に関与していることが強く示唆された.今後,OIP-1の骨吸収抑制機序を解明するため,OIP-1とIFN-γの関連を検討していく予定である.
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