研究分担者 |
雫石 聰 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (00028789)
小島 美樹 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 助手 (20263303)
林 直治 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 助手 (10303984)
喜多 純一 (株)島津製作所, 分析計測事業部・事業戦略室・新規事業開発G, マネージャー(研究職)
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研究概要 |
口臭を構成する物質は複数存在すると示唆されているが,定量が困難であり,各物質の官能評価への寄与が明らかでないことから,臨床では揮発性硫化物濃度のみが口臭の評価に用いられているのが現状である。本研究では,正確に口臭を評価するために,新たに開発を行った電子嗅覚装置とヒト嗅覚の認知パターンを模倣した「人工知能ソフトウェア」を用いて,口臭構成物質の寄与割合を明らかにし,口臭の絶対的評価を確立することを目的とした。対象者は口臭を主訴として大阪大学歯学部附属病院口臭外来を受診した患者28名にコントロールとして健常者18名を加えた41名とした。口臭の評価は呼気中の揮発性硫化物濃度,官能試験値および電子嗅覚装置より算出される臭気指数および臭気寄与を指標として用いた。臭気寄与を用いて口臭の構成物質の評価を行ったところ,以前より口臭の主成分とされている揮発性硫化物は口臭の46.0%に寄与しているが,それ以外にアンモニア,アミン系,アルデヒド系,エステル系,および芳香族系などの物質が3%,18%,1%,4%,8%寄与していることが明らかとなった。次に,揮発性硫化物以外の物質による寄与も含めた口臭の総合評価として臭気指数を算出し,官能スコアとの関係を調べたところ相関係数は0.76で,官能スコアと揮発性硫化物濃度対数変換値との相関係数0.53よりも高い値を示した。以上の結果より,口臭には揮発性硫化物以外の物質も寄与していることが明らかとなり,電子嗅覚装置と新たに開発したソフトウェアを用いることで口臭を揮発性硫化物以外の物質の寄与も含めて評価することが可能であることが明らかとなった。この評価はヒト嗅覚と類似した特性を持つことから,臨床的にも口臭の総合的評価として有用であることが示唆された。
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