研究概要 |
【目的】病気の回復期のベットレスト期間を短縮し、回復力を高めていくために患者自身が取り組むべきセルフヘルプ技法への支援が不足していると思われる。本研究では、臥位姿勢で可能な身体機能活性化のためのLow-Impact-exerciseの効果を検証した。【研究方法】健常青年20名(20.3±1.7歳、BMI 21.5±1.65)を対象に、Low-Impact-exerciseの実施前後の生体機能への影響を分析した。測定用具・評価指標は、アクティブトレーサー(GMS社製AC-301)による自律神経機能及びサーモグラフィー(日本光電社製INF-210)と微小循環モニター(Moor社製DRT4)による皮膚温および末梢皮膚血流、坂入・征矢らによる二次元気分尺度による主観的評価である。 【実験手続きおよびLow-Impact-exerciseの課題】データ測定は平成15年8月〜9月の2ヶ月間。場所は人工気候室(室温26℃、湿度50%)。被験者は病衣に着替え主観尺度に記入後ベット上10分間安静をとった。基準値データを測定後Low-Impact-exercise(上肢の運動4種類((1)肩回し、(2)肘関節の屈伸、(3)手首回し、(4)指関節の屈伸運動(グーパー運動)を各10回を5分間実施し、続いて下肢の運動4種類((1)股関節回し・(2)膝関節の屈伸・(3)足首回し、(4)足指回しを各10回を5分間実施)を実施してもらい、運動中及び運動後のデータを測定した。終了後主観尺度に記入させた。 【結果】LF/HFは上肢運動後には変化なく下肢の運動中は運動前より上昇し(p=.020)、運動後は運動中より下降した(p=.0047)。HFは上下肢とも運動前より運動中に下降し(上肢p=.022,下肢p=018)。運動後は運動中に比べ上昇した(上肢p=.017,下肢p=.009)。心拍数は、開始時よりも運動中増加し(上肢p=.002,下肢p=.001)、運動後は運動中に比べ減少した(上肢p=.001,下肢p=.001)。上肢・下肢とも運動による皮膚血流量に変化なく、下肢の皮膚温のみ運動後に下降した(p=.011)。運動前後の二次元気分尺度は、「ポジティブエネルギー」に変化無く「ネガティブエネルギー」が減少した(p<.007)。覚醒度(興奮-鎮静)が減少し(p=.007)、快適度(快-不快)は上昇した(p=.038)。 【考察】上下肢運動全体として、運動中は交感神経活動が僅かに上昇し副交感神経活動は減少した。運動後は速やかに回復し副交感神経活動は運動前より上昇し、気分尺度も改善した。この課題が自律神経機能を刺激する低刺激の安全な運動になりうると考えられた。
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