本研究は、救急初療看護において潜在する問題をあぶり出し、解決を図るとともに、効率的効果的な看護活動を可能にする先駆的な看護提供システムの構築を実現することである。研究者と実践者がともに問題状況に関与し、様々な研究手法を用いて現場の変革にかかわっていくアプローチとしてアクション・リサーチ法を採用し進めてきた。研究2年目の本年度は、昨年度中に明確にした複数の問題状況に対するアクションプランを実行し、評価のプロセスを踏んだ。本研究で最も重視したことは、実践者の思いや願いを大切にし、共有するとともに、変革者は実践者であることを原則としたことである。実践者が解決を望んだ課題は、(1)人材育成、(2)現任教育:リーダーナース編、(3)現任教育:新人ナース編、(4)医療事故防止とリスクマネジメント、(5)トリアージシステムの確立とトリアージナースの育成、(6)ドメスティック・バイオレンスへの対応、(7)臨床判断能力の育成であった。課題ごとに7つのチームを結成し、現状の分析、アクションプランの策定、試行、評価のプロセスを繰り返した。本年度の経過中に、「ドメスティック・バイオレンスへの対応」については、院内のMSWと連携を取ることで一定の評価を得、完結とした。また「医療事故防止とリスクマネジメント」は、概に進められている院内組織としてのリスクマネジメント活動への参画によって完結した。したがって、救急初療養に独自なテーマとして残る(1)、(2)、(3)、(5)、(7)を主たるテーマとして活動した。 研究者は概ね月2回のペースで施設を訪れ、実践者とともにアクションプランの実施状況について議論を重ねるとともに、常時E-mailによる相談に応じた。実施されたアクションプランは一定期間後に評価され、効果が確認された課題については随時関連学会において発表を行ってきた。特に、「トリアージシステムの確立とトリアージナースの育成」については重要事項と考えている。日本には未だ救急患者用トリアージガイドラインがないため、諸外国の文献を参考に当該施設の救急患者に該当するガイドラインを作成した。現在試行中で、3か月分のデータ5000件のデータ分析中である。
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