研究課題/領域番号 |
15401003
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
吹田 浩 関西大学, 文学部, 教授 (80247890)
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研究分担者 |
西浦 忠輝 東京文化財研究所, 保存科学部, 部長(研究職) (20099922)
米田 文孝 関西大学, 文学部, 教授 (00298837)
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キーワード | エジプト / 文化財修復 / マスタバ / サッカラ |
研究概要 |
2003年8月に、エジプト国の古物最高評議会より、サッカラにあるイドゥートのマスタバ墓の保存修復のための公式の許可を得た。この墓は、古王国第6王朝初頭(紀元前2360年ごろ)に遡る。 同年11月に、第1次調査を行った。調査の対象は、石灰岩台地の地下12mほどのところに掘込まれた埋葬室の壁画である。10m×4mほどの広さの空間に描かれた壁画は、当時の色をとどめた大変に美しいものである一方、四千年以上の時の経過を経て、風化し、壁画が剥落しつつある状態にあることがすでにエジプト側の研究者によって報告されていた。そこで、まずは壁画の状態を確認することが最初の目的であった。 壁画の状態は、予想をこえて悪いものであった。母岩の石灰岩に粘土が多く含まれているため、大変にもろくなっていた。母岩は4つの層からなっているが、特に壁画の最上部の層がもろく、えぐられたように崩れている箇所がいくつもあった。その他の層でも、母岩の上に塗られたプラスターが波打ったような状態にあり、多くの箇所で剥落する危険が生じていた。 第1次調査では、壁画を記録するために、写真撮影、ビデオ撮影を行うとともに、すでに剥落して床面に落ちている断片から比較的に大きなものを、さらなる破損から守るために取り上げた。さらに、埋葬室の環境を把握するために、温湿度計を埋葬室の内部と外部に2個ずつ設置した。加えて、壁画と母岩の状態を把握するために、埋葬室のプラスター、母岩、埋葬室にいたるシャフト部分の母岩からサンプルを取り、化学分析を行うことにした。X線回析、岩石分類学、DTA分析とTGA分析、赤外線分析、断面分析法などである。 また、エジプトの古物最高評議会で保存化学部門の責任者である、アフメド・シュエイブ氏を日本に招聘し、研究機関で日本の技術を調査してもらった。その結果、いくつかの技術がイドゥートにも応用できる可能性があることが確認された。
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