研究課題
本年度の研究実施計画にもとづき、『ナウサリ聖火殿』を英語に翻刻する作業、有意味図版と質問紙表を使用しての祈りの分析とイラーンにおけるゾロアスター教徒の実態調査を行った。『ナウサリ聖火殿』史料の翻刻によって、現時点までに明らかになった事実は、次のとおりである。(1)ナウサリの聖火は、バガサ祭司(Bhagaria)のアンジュマン(Anjuman)とその下部組織が主体となってアンジュマンの利権のために創設した。従来のように死者の魂の供養を目的としていない。(2)デサイ家とアンジュマンで聖火の所有権をめぐって争ったが、アンジュマンの所有権が認められた。(3)聖なる火が移されるとき、人々の祈りに応えて聖火が燃え上がるという奇跡が起こった。祈りの調査は、ナウサリに現存するゾロアスター教徒パーシーを対象として、質問紙表を使用しての面接法で行った。収集した事例数は300である。調査の結果、次のことが明らかになった。(1)パーシーは、最も重要な祈りの文言はアヴェスター語ですべて言えるが、その意味は全然知らない。パーシーの祈りは真言(manthra)や呪文として機能している。(2)パーシーは古代から継承している祈りの意味は知らないが、それらをいつ唱えるべきかは知っている。(3)パーシーが祈りの意味を知らないことは、(1)パーシーの祈りの言葉がアヴェスター語であり、アヴェスター語からグジャラーティ語への翻訳が十分に行われなかったこと、(2)パーシーが布教と改宗を禁止していること、(3)パーシーが宗教教育を十分に行ってこなかったことに起因している。青木は、2004年12月9日から同月27日、イラン国スィースターン・バルーチェスターン州とファールス州における古代ゾロアスター教遺跡の実態調査を行い、古代ゾロアスター教の拝火神殿と摩崖横穴式墓室の関連を明らかにした。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (4件) 図書 (1件)
宮崎公立大学人文学部紀要 第12巻第1号
ページ: 163-188
Bulletin of Miyazaki Municipal University Vol.12, No.1
ページ: 189-204
東京大学東洋文化研究所紀要 第146冊
ページ: 41-72
XIX World Congress of the International Association for the History of Religions-The Book of ABSTRACTS- VOL.1
ページ: 186