研究課題
本年度の研究実施計画にもとづき、有意味図版と刺激語と作文による分析方法を使用して、聖なる火と鳥葬に関するゾ教徒の心的態度を取り出した。特に、聖典『アヴェスター』をとおして記憶されてきている鳥葬、犬、清浄儀礼、悪魔、牛などの象徴的存在に関して有意味図版を使用した調査を再度行い、従来の調査のレヴューとした。海外研究協力者のDasturji DR. Firoze M. KotwalとDasturji Meherji Ranaは、ペルシア語文献史料とグジャラーティ文献史料から本調査の内容を精査し批判した。今回は、有意味図版と刺激語による自由連想を含めた質問紙表調査によって得られる結果を、宗教度の強弱にしたがってグループ分けした群別に検証した。現時点で明らかになった内容は次のとおりである。(1)聖なる火については、竈の火と聖火殿の火に対する祈りの内容が異なっており、前者においては自身の身近なことがらのために、後者においては地域、コミュニティー、世界を含めたことがらのために祈る。宗教度強群は、公共性への志向が宗教度弱群よりも強い傾向を示している。(2)鳥葬の塔については、宗教度強群は不安を感じることは弱く、神に近いているという感覚を持つが、宗教度弱群は鳥葬の塔を不安と感じ、救いの感覚や幸福の感覚を感じる割合が低い。(3)宗教度強群は、言語、知識、教育への志向が宗教度弱群よりも強い傾向を示している。悪魔に対抗する手段である犬(犬による凝視)、牛(の尿による清め)、清浄儀礼(9日間隔離され身体の穢れをおとす儀礼)、牛、先祖供養、過去帳などについて知識は、宗教度に比例して多くなる。しかし、既に明らかにしたように、ゾロアスター教徒の古い祈りの意味はほとんどすべて継承されてきていない。(4)宗教度強群は、内調整の傾向(自分および他の人のマイナス状況を自身の内面に活力を得る仕方で立ち直らせる)を強く示し、ゾロアスター教徒パーシーにおいても、』深い、柔らかいという刺激語に対して、単に自然の山や川や食べ物などの深さや柔らかさだけでなく、人間の内面や知識などの深さや柔らかさをも重視した連想をする傾向が宗教度弱群よりも高い。野村(1998)の仮説の噌部は有意性をもって検証された。青木は、中世ペルシア語パフラヴィー語文献の翻刻を行うとともに、ゾロアスター教義が神話的な天使論・悪魔論の集合体からより理論化・組織化された方向に推移していく過程に注目して新たな知見を導き出した。
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宮崎公立大学 人文学部 紀要 第14巻第1号
ページ: 283-308
Bulletin of Miyazaki Municipal University Vol.14,No.1
ページ: 261-281