本年度は、まず東京外国語大学にて研究代表者と研究分担者の研究会合をひらき(5/31-6/2)、コエ諸語データベースの作製法と利用法について議論した。また2003年度の海外渡航の予定調整をおこなった。 その後、これまでに調査結果から、中川と大野はグイ語の知覚動詞とその関連語彙の意味分析をおこない、その結果を順次、データベースの意味記述に反映させてゆく作業を進めた。それと同時に、コエ語族のひとつであるナマ語の最新の辞書を入手し、知覚動詞にかかわる記述の検討に着手した。この検討作業は、現在進行中である。 コエ語族のグイ語とガナ語に関しては、知覚に関わる語彙クラスのひとつに、reduplicationの形式をとる多数の語彙があり、これらは、形態声調論的に同じ振舞いをすることが分かってきた。このクラスの語彙の分析結果も、現在、データベースに入力しているところである。グイとガナにユニークであるように思われるこの語彙クラスに該当する要素が、他のコエ語ではどのように実現するのかは、来年度以降の現地調査の重要な調査項目となる。 今年度の海外渡航は、高田が主にボツワナにおいてコエ諸語の現地調査を行い、中川は南アフリカでコイサン研究者を訪問し、本研究に直接関連する資料収集と討議を行った。また大野は、オーストラリアに赴き(旅費は本研究費ではない)、知覚動詞の類型論において先端的研究をすすめているメルボルン大学のニック・エバンス教授を訪問し、討議をおこなった。
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