研究課題/領域番号 |
15401016
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 文教大学 |
研究代表者 |
遠藤 織枝 文教大学, 文学部, 教授 (10203663)
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研究分担者 |
劉 穎 成城大学, 文芸学部, 助教授 (10307118)
陳 力衛 目白学園短期大学, 助教授 (60269470)
櫻井 隆 明海大学, 外国語学部, 助教授 (60255031)
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キーワード | 女書 / 女文字 / 保存 / 文字リスト / 異体字 / 何艶新 |
研究概要 |
湖南省江永県に伝わる女性だけの文字-女書-は、伝承者が2人しかいなくて絶滅寸前であるが、2002年11月に県政府が、女書文化村を設立し、その中に女書学堂をもうけて、若い女性たちに教えるようになってきた。しかし、教える胡美月は、1990年に没した高銀仙の孫であり、少し文字と昔の歌を知っているというだけで、従来のこの地の女性たちのようにこの文字を用いて歌を作り、自己の意思感情を表現することはできない。本来の意味の伝承者とはいえない。そういう人を教師として教えても、後継者を育てることにはならない。 この文字の使われた、女性が虐げられていた時代とは社会状況が大きく変化して、女性が自己の悲惨な運命を嘆いたり、それを訴えたり、慰め合ったりするための表現手段としての、この文字の役割はすでになくなっている。女性たちにとって、特殊な文字で、自己の意思感情を表出する必要もなくなっている。形だけの文字を伝えても、真の保存にはならない。 遠藤は、このような事態に至っている際の文字の保存とは、ただ一人この文字の本来の使い方ができる、何艶新の文字と作品をできるだけ多く残すことだと考え、現地を訪ねては何艶新に書いてもらっている。 また、いずれ消えていく文字の本来の姿を忠実に記録することこそが保存だと考えるので、すでに作成された文字リストの整理に着手している。研究者が今まで、8種類の文字リストを作成しているが、それらが文字の整理の仕方が不統一で、異体字の処理が異なるために多いのは1800字、少ないのは470字と極端な開きを見せている。このようなリストだけが残されるのは、後世に混乱を伝えることになろう。何が健在であるうちに、彼女の知りうる女書をすべて記録して、リストの混乱も整理しておきたいと考えている。
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