研究課題/領域番号 |
15401021
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
荒川 正晴 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (10283699)
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研究分担者 |
吉田 豊 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (30191620)
竹内 紹人 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (10171612)
松井 太 弘前大学, 人文学部, 助教授 (10333709)
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キーワード | コータン / トゥルファン / ウイグル語文書 / 漢語文書 / チベット語文書 / マザル・ターグ / ベゼクリク石窟 |
研究概要 |
平成17年度は、昨年度に続き8月29日より9月5日にかけて、研究代表者の荒川と研究分担者の吉田・武内が、コータン地区において「胡漢文書」の調査と関連遺跡の調査を行った。また研究分担者の松井は、昨年に引き続き、ウルムチ・トゥルファン地区を中心にしてトゥルファン出土文書の調査を行うとともに、トゥルファンで開催された国際学会に参加して研究発表を行った。昨年度の調査との一貫性をはかり、コータン地区では、主に漢語・チベット語文書を、またウルムチ・トゥルファン地区では、ウイグル語文書を調査した。 今年度の調査の特徴は、コータン地区では、漢語・チベット文書が多数出土したマザル・ターグ遺跡と近年発見されたドモコの仏教遺跡の調査を重点的に行った点にある。 この二つの遺跡の調査は、次の点において、漢語・チベット語文書を解釈するうえで重要な貢献をしている。 まず今回のマザル・ターグ遺跡の調査により、この地が7・8世紀になって軍事目的のために完全に人為的に作られた拠点であったことが明らかとなったが、このことがこの遺跡から出土した文書の性格を捉えるうえで重要となった。すなわち、出土文書に書かれていることは、明らかにマザル・ターグ周辺の土地の状況を伝えるものではなく、他の地で作成された文書がこの地にもたらされたものであったことが知られる。この見解に基づいて、あらたにコータン地区の社会状況を見直してゆくことが求められてくる。 また次にドモコ周辺で発見された仏教遺跡に関しては、これがコータン地区の仏教の特色を伝えるものとして重要である。コータンのオアシス住民がどのように仏教を信仰していたのか、民間レベルでのそれを知ることができ、それがまた仏教関係の文書に対する解釈を深めるものとなる。 他方、ウルムチ・トゥルファン地区では、ウルムチの新彊博物館および吐魯番地区博物館において、新出のウイグル語文書の調査を行った。とくに1980年にトゥルファンのベゼクリク石窟から出土したウイグル語文書を中心に調査を進めた。これによって、従来の研究を深めるとともに、中国における新出文書の発見状況について新たな知見を得ることができた。今後、調査を進めていくうえで、貴重な布石となるものと確信する。
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