研究課題/領域番号 |
15401023
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
川西 宏幸 筑波大学, 歴史・人類学系, 教授 (70132800)
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研究分担者 |
堀 賀貴 九州大学, 工学部, 教授 (20294655)
周藤 芳幸 名古屋大学, 文学部, 助教授 (70252202)
中村 利廣 明治大学, 理工学部, 教授 (60062022)
力丸 厚 長岡技術科学大学, 環境・建設系, 助教授 (70334688)
内田 杉彦 明倫短期大学, 歯科技工士学科, 助教授 (00211772)
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キーワード | 古代エジプト / 末期王朝 / 終焉・衰亡 / 危機 / アコリス / 都市 / 生産・交易 / 精神世界 |
研究概要 |
平成15年7月12日に成田を出発して、2ヶ月に及ぶ現地調査をエジプト・アコリス遺跡で実施した。また、12月6・7日の両日には研究分担者、専門知識提供者とともに研究会を開き、本年度現地調査を総括し、問題点を整理した。この間メール等で分担者相互の研究活動の進捗と経過について密に情報を交換し、研究補助者を雇用してデータ整理などを行った。さらに調査全体の成果は、学会で発表するとともに、共同通信を通じて配信し、個別の成果は、朝日新聞などの文化欄に寄稿した。 本年度の研究成果は、以下の通りである。 (1)アコリス遺跡南西端で発掘調査を行った結果、末期王朝期の皮革製品工房が検出された。ここでは鞣しから染色・縫製に至る一貫生産を行っていた。これはエジプトでは初めて、世界的にも希有な調査例である。 (2)すでに鉄器時代に入っていた末期王朝期に、石器や木器や青銅器がなお生産用具の重要な地位を占めており、鉄器は石材加工具や、武器に限られていることが判明した。鉄器が広く普及していた西アジア方面とはこの点で相違する。 (3)2000点を超す大量の装身具が出土し、このなかには遠距離交易によって運ばれたタカラガイなどの素材が数多く、未製品も含まれていた。これは活発な交易・生産活動の存在を示唆する。 (4)西端の崖面に営まれた墓は、古王国時代末に作られ、末期王朝期に盛んに再利用されていた。これもまた都市活動の活発さを物語る。 以上要するに、王朝の衰滅期にあたる末期王朝時代において、伝統的な生産用具に依拠して農耕・手工業生産を行ういっぽう、交易・生産活動は極めて活発であった。現世利益を願う土着の神々が復権した形跡を残していることもこれは契合する。
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