2003年度、本研究課題では、研究計画に示した通り、エクアドル南部に位置するインカ国家の行政センターであるソレダー遺跡の発掘調査、周辺域の一般調査と発掘調査、出土遺物の整理・分類が実施された。また、調査領域の特質理解をさらに深めるため、2001-2002年の一般調査で得られた遺物の再検討も併せて行った。さらに、現地の歴史学者の協力を得、歴史文書を探し出す調査も開始している。 ソレダー遺跡の発掘調査は、広場ならびにそのほぼ中央部に配された聖壇ウシヌ、そしてバーニョ・デル・インカ(Bano del Inca)において実施された。この結果、尾根に配された広場が、自然の地形に掘削を加えて整地されていること、ウシヌのオリジナルのプランが円形を呈しており、その中央部に穴を掘って供物を焼いていること、広場およびウシヌの表土がかつて赤色を呈していたことなどが明らかとなった。また、バーニョ・デル・インカでは、建設途上で放棄された状況が明瞭に確認された。これは本遺跡の東方6kmに位置し、やはりインカの行政センターであるムユプンゴ遺跡と同様の特徴であり、インカ国家とエクアドル海岸部の関係を考察する上で、極めて示唆的なデータといえる。出土遺物の99%は土器片であった。これらは、やはりムユプンゴ遺跡と同様の特徴を呈しており、製作集団・場所、そして分配の基点が同一であったことを示唆している。 一方、周辺域において実施した一般調査によって新たにインカ期の遺跡が複数確認された。この内、ポルボラ・バハ遺跡において、ペルー北海岸の土器等が副葬された墓を1墓検出した。この墓の意味合いに関しては、周囲のコンテクストを入念に考察しながら解明していく必要がある。 次年度以降も、入念な調査・研究を継続し、本研究課題の主目的であるインカ国家とエクアドル海岸部の関係解明に向かいたい。
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