研究課題/領域番号 |
15401035
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
三尾 稔 国立民族学博物館, 民族学研究部, 助教授 (50242029)
|
研究分担者 |
中島 岳志 京都大学, 大学院・アジアアフリカ地域研究科博士課程, 日本学術振興会特別研究員
小牧 幸代 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (20303901)
八木 祐子 宮城学院女子大学, 学芸学部, 助教授 (70212272)
|
キーワード | インド / 文化人類学 / 宗教 / 祭礼 / 都市 / ナショナリズム / ヒンドゥー教 / イスラーム |
研究概要 |
研究初年度にあたる15年度は、研究代表者および分担者が各自調査地域に赴いて予備的なフィールド調査を実施したり日本国内で先行文献の研究を行ったりするとともに、調査結果に基づく研究会を開いて打合せを行い、16年度以降の本格的な民族誌学的フィールド調査の準備を行った。三尾は15年9月末から10月にかけてインド西部ラージャスターン州メーワール地方の中心都市ウダイプルで1ヶ月弱のフィールド調査を行い、秋の女神祭礼においても祭礼の内容や挙行方式が90年代以降大きく変容している事実を発見し、これにインドの経済自由化や宗教ナショナリズムの興隆が密接に関連することをインタビューや参与観察によって確認した。また祭礼の変容は宗教ナショナリズム団体の媒介もあって都市部にとどまらず農村部や先住民族地域にも広がっていることを確かめた。八木は8月から9月にかけてインド北部のウッタルプラデーシュ州の農村部で経済自由化や政治の変動が村落の社会や文化に及ぼす影響に関して調査を行ったのち、同州中部の大都市バラナシにおいて予備的な調査を実施した。その結果90年代のヒンドゥーとムスリムの対立がバラナシの祭礼の挙行のあり方に大きな影響を与えていること、また都市の新興中産階層や新たに移住してきた人々がコミュニティ単位で新しい祭礼を始めていることなどが明らかとなった。一方中島は首都デリーにおいて10月に調査を行い、宗教ナショナリズム団体が祭礼の興隆や変容にどのように関わろうとしているのかをインタビューによって明らかにするとともに、首都圏では祭礼が信仰というよりは消費の対象となりつつある実態を参与観察調査によって確認した。小牧は国内での文献調査によってインドやパキスタンのムスリムの信仰実践やアイデンティティが90年代以降の政治経済変動にどのように影響され変容しようとしているのかを明らかにした。15年度は研究協力者として民族学博物館外来研究員中谷純江、大阪樟蔭大学講師金谷美和、東海大学講師小磯千尋の3名が本研究課題に参加した。中谷はラージャスターン州西部、金谷はグジャラート州西部、小磯はインド西部の大都市ムンバイでそれぞれフィールドワークを実施した。各地域の個別事情によって現象形態は様々だが、いずれも90年代のヒンドゥー・ムスリムの対立や急速な経済発展がそれぞれの社会を大きく変動させそれが信仰実践や祭礼のあり方の変容にも現れている。研究会はフィールドワーク実施前の7月と実施後の12月の2回、民族学博物館で行い、研究協力者も含めた全員が参加して成果を報告し活発な議論を行った。その結果、(1)大都市を中心とした消費社会化に十分注目しつつ、祭礼のベースであるインド北・西部の都市社会、特にその中産階層の特質を明らかにする(2)宗教間の対立と同時に、都市と農村の格差にも注意を払い広域的な祭礼の変容動向を把握する(3)雨期から雨期明けの祭礼に変容が顕著であることから出来る限りこの時期に集中して各地の祭礼を調査して比較を行うといった点が来年度以降の共通の調査課題として焦点化された。16年度はこのような共通課題を踏まえつつ、各自のフィールドでの調査をより深めることが目標となる。
|