研究課題/領域番号 |
15401035
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
三尾 稔 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 助教授 (50242029)
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研究分担者 |
八木 祐子 宮城学院女子大学, 学芸学部, 助教授 (70212272)
小牧 幸代 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (20303901)
中島 岳志 京都大学, 人文科学研究所, 日本学術振興会特別研究員
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キーワード | 南アジア / 都市 / 祭礼 / ナショナリズム / 社会変化 / 宗教 / 文化人類学 |
研究概要 |
平成15年度の調査においては各自のフィールドでの課題を発見し、問題意識を深化させることに主眼がおかれたが今年度はその問題意識に基づいて、さらに各自のフィールドでの調査を継続することが主目標となった。三尾は16年10月から11月にかけて、ラージャスターン州およびグジャラート州で秋の女神祭礼の変容に関する調査を行い、新しい都市型祭礼が農村部にまで広がっていることを確認するとともに、その広がりがヒンドゥー・ナショナリスト勢力の農村部への浸透の重要な手がかりとなっていることを明らかにした。その成果はManohar社から出版される英文論文集に発表される。またイスラーム的な聖者廟の祭礼における変容を政治や社会の変化と関連させつつ分析し論文にまとめた。八木は16年9月にヒンドゥーの聖地ワーラーナスィーで雨季の様々な祭礼を聖地を中心とした都市の社会構造と関連させつつ調査した。また聖地の都市の成立に関しての基礎的な考察を論文にまとめた。小牧はインドおよびパキスタンにおけるイスラームの動向を南アジアの政治・経済・社会の急速な変化と関連させて分析し、いくつかの論文にまとめた。一連の予備的考察を踏まえて、17年3月にインド・パキスタンでスーフィズムの聖者廟祭礼の調査を実施し、ムスリムの社会変容と祭礼の変容との関連を追及した。中島はインドのヒンドゥー・ナショナリスト団体の歴史と現状に関して文献調査を行い、それを図書や論文にまとめる一方、16年8月から10月にかけてデリー南部の寺院でフィールド調査を実施した。この寺院はヒンドゥー・ナショナリズムと深い関係を保つ一方、グローバルに展開するヒンドゥーの宗教運動とも関わりが深く、ナショナリズムとグローバリゼーションとの相関が寺院の祭礼から看取できるユニークな事例である。その調査の成果は17年度以降に発表する。16年度も研究協力者として民族学博物館外来研究員中谷純江、大阪樟蔭大学講師金谷美和、東海大学講師小磯千尋の3名が本研究課題に参加した。中谷はラージャスターン州西部、金谷はグジャラート州西部、小磯はインド西部の大都市ムンバイでそれぞれフィールドワークを継続実施した。研究代表・研究分担者・研究協力者総計7名の調査全体から浮かび上がるインド北・西部の祭礼の変容の傾向としては、その変容が都市部だけにとどまらず農村部にも急速に及びつつあること、その広がりが多様な電気メディアの普及やナショナリズムの浸透と密接にかかわりがあること、変化の速度そのものが速くなり地域間の相互影響も変化に深く関わっていることなどが指摘できる。各自の調査が様々な時期に分散したことから、研究会は16年6月に1回実施し、今年度の調査方針について打ち合わせを行った。17年度は研究会を多めに実施し、この科研で得られた知見の分析と総合を行うことが課題となる。
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