研究課題
平成16年度の現地調査は、デンマークにおける女性運動の社会的政治的インパクトを把握するため、(1)EUおよび北欧5カ国との協力関係からみた女性組織とジェンダー・メイン・ストリーミング、(2)デンマーク政府と女性団体との関係及び政策決定における女性団体の影響力、(3)デンマークにおける代表的な女性組織の実態(組織形成の歴史的経緯、組織構造、意思決定、成員、活動内容、成果等)、そして(4)女性政策関連団体の四つのレベルで実施した。具体的には、(1)北欧協議会・ジェンダー部局、(2)デンマーク政府・平等局、(3)デンマーク女性協会、デンマーク女性委員会、デンマーク女性活動協会(旧デンマーク主婦連合)、(4)公的機関労働者組合、女性とジェンダーに関する情報センター(KVINFO)を訪問し、責任者や代表者にインタヴューを行なった。また、各組織が発行する書籍類も併せて収集した。この一連の調査の結果、以下の点が明らかになった。デンマークの女性政策あるいはジェンダー関連政策の形成において女性組織は大きな影響力を行使しており、彼女たちの意見は確実に政府政策の中に反映されていた。しかし、それは女性団体の一方的な圧力行動の結果ではなく、デンマーク政府がこうした非政府団体の意見を求め、それを政策に取り入れようとしているからでもある。政府の平等局は、非政府・非営利女性活動組織との対話の場を定期的に設定し、懸案の政策に対する各団体の意見を求めている。他方、女性組織の側も、女性の生活に具体的に役立つ、より現実的な提案を行なっている。いずれの組織も会員の高齢化、会員数の減少といった課題に悩んでいるが、女性の切実な要求を取り上げ、組織が女性たちに「役に立つ」存在であるということを実績によって示すことで、若い世代の女性(さらにそのパートナーである男性)を惹き付けるよう努力している。さらに、今回は、米国政治学会(シカゴ)、北欧アジア研究所(コペンハーゲン)、デンマーク・オーフス大学において「日本における女性運動と政治」に関する報告を行ない、欧米の研究者と学術交流ができたことも大きな成果であった。
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Paper for presentation at the annual meeting of the APSA, online 2004-09-02
ページ: 1-48