平成17年度の現地調査は、主に(1)スウェーデンにおける女性運動の社会的政治的インパクトの把握、(2)世界の政治クオータを研究するストックホルム大学のドゥルゥデ・ダルレープ教授のクオータ・プロジェクトに参加することを目的に、(1)スウェーデン政府と女性団体との関係及び政策決定における女性団体の影響力、(2)スウェーデンにおける代表的な女性組織の実態(組織形成の歴史的経緯、組織構造、意思決定、成員、活動内容、成果等)、(3)女性政策関連団体、そして(4)クオータ・プロジェクトの活動調査と学術交流の4つのレベルで研究を行なった。具体的には、(1)スウェーデン政府・ジェンダー平等局、(2)D.V.被害女性のためのシェルター全国協議会、(3)女性政党「フェミニスト・イニシアティヴ」を訪問し、責任者や代表者にインタヴューをした。国家主導の所謂「上からのフェミニズム」という通説に反して、現実にはスウェーデンの女性政策あるいはジェンダー関連政策の形成において女性組織は大きな影響力を行使しており、彼女たちの意見は確実に政府政策の中に反映されていた。ジェンダー平等局は、非政府・非営利女性活動組織との対話の場を定期的に設定し、懸案の政策に対する各団体の意見を求める機構を整備していた。しかし、より衝撃的であったのは、女性たちが、世界のトップ・レベルにあるスウェーデンの男女平等政策に必ずしも満足しておらず、真の平等を求めて、女性のための女性によるフェミニスト政党が昨年9月に旗揚げしたことであった。これにより、「上から」の国家主導の変革と同時に、「下から」の女性たちのエンパワーメントが不可欠であることが明らかになった。ストックホルム大学では、ダルレープ教授のもとで政治的クオータ制度について学び、さらに「女性運動の国際比較調査」についての研究報告、「日本の選挙と政治」に関するセミナーでの講演の機会を与えられ、スウェーデンの研究者と学術交流ができたことも大きな成果であった。さらに、アメリカ政治学会(ワシントンD.C.)への参加、オックスフォード大学日産日本学研究所訪問によって、米英の政治学者と交流できたことも刺激的経験であった。
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