研究課題/領域番号 |
15402017
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 海外学術 |
研究分野 |
政治学
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
橋本 卓 同志社大学, 法学部, 教授 (00208448)
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研究分担者 |
落合 恵美子 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授 (90194571)
橋本 泰子 四国学院大学, 社会学部, 教授 (80236075)
野津 幸治 天理大学, 国際文化学部, 助教授 (40208369)
藤井 和佐 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 助教授 (90324954)
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研究期間 (年度) |
2003 – 2005
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キーワード | タイ / バンコク / 住民自治 / 地方分権 / 地域社会 / 家族 / 市民社会 |
研究概要 |
1.研究会開催について 3年間のプロジェクト期間中に10回の研究会を行った。また、2005年12月18日には、タイからゲスト・スピーカーを招き、コメンテーターに鰺坂学氏(同志社大学社会学部)を迎え、同志社大学において拡大研究会を実施した。研究会では、バンコク都庁職員・チンダー・イムボーン氏による報告の他、調査で得られた知見についてメンバーより報告がなされた。2.得られた研究成果 3年間のプロジェクト期間中に5回のタイ調査が行われた。調査の結果得られた知見:バンコク都で実施されている新しい住民自治制度であるチュムチョン制度であるが、その制度が効果的に機能するためには受入れ側の地域社会としての成熟度(「市民社会」化)が必要であることが調査の結果、明らかにされた。長い間、内務省地方行政局管轄の村落行政単位の末端に位置づけられていた旧・農村地区では、カムナン・プーヤイバーンの強力なリーダーシップによる「上意下達」的パトロン・クライエントシステムに慣れており、チュムチョン制度もその文脈で理解されているがため、新しいリーダー層のやり方が「リーダーシップ」不足として理解されてしまう。実際、非農家が増え、よそ者が移住し、エスニシティ的にも職業的にも所得階層も単一でなくなった農村地区では、地域的なまとまりは急速に衰退し、新しく「住民自治組織」を作り出す能力という点では、分譲住宅地に比べ、あきらかに劣っている。一方、都市中間層から形成されている分譲住宅地チュムチョンでは、不動産会社との集団交渉という問題対蹠的に結成されたということもあり、委員会は能率的に運営されてきたと言えるが、交渉がある程度解決した途端、チュムチョンという委員会組織を「利権」とみなす旧来の考え方が一部の住民の間に出現し、2005年8月のチュムチョン選挙では、旧委員会が敗北するという結果を招いた。分譲住宅地におけるこのような動きは、今後さらなる観察の必要があるだろうが、以上のことから、階層移動によって急速に拡大しつつある都市中間層において、新しい地域社会形成の過程は、直線的というよりは、行きつ戻りつの蛇行を繰り返し、「タイ的」な都市型住民自治組織、市民社会の形成を模索するものと思われる。綿密なフィールド調査に基づくデータにより得られたこれらの新たな発見は、さらに今後の理論的精緻化を必要とするが、まだほとんど研究業績のない大都市圏における住民自治組織の現状に対し、問題提起を行うことができたと考える。
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