2003年9月のドイツ調査において、(1)研究者として、「活性化」のための制度改革論議の中で意見を異にする、ライス教授(フランクフルト専門大学福祉学部)、ハネッシュ教授(ダルムシュタット福祉大学)、シュピンドラー教授(エッセン大学)、ゼーライプ・カイザー助教授(ブレーメン大学)に会い、それぞれの見解を聞いた。 また、(2)社会福祉団体や自治体福祉部局などを束ねる「ドイツ公私扶助連盟(DV)」を訪ね、各団体や自治体団体ごとの動きや、ドイツ公私扶助連盟としての改革提案を聞いた。 そのうえで、(3)政策担当機関として、CSUのヘッセン州社会労働省、SPDのブレーメン州労働社会省において改革の進展状況を確認した。さらに、(4)現場の実施機関として、ケルン市で職業紹介をしているNPO「ジョブボルゼ・ミュールハイム」や、ブレーメン市で就労扶助を担っているNPO「バーベキュー」を訪問し、現場から見た改革の動きについて話を聞いた。 これによって、急速に進んでいる社会扶助改革のポイントが、「活性化」のための就労支援サービスをマネジメントする「ケースマネジャー」の制度設計と、低賃金雇用創出対策の制度設計にあることがわかった。 当初、ハネッシュ教授の招聘を予定していたが、直前の急病のため実現できなかった。ただし、同教授らとの意見交換をもとに、日独比較の視点から、「活性化」の前提になる社会扶助制度と、とりわけ「稼働能力活用」の位置づけの違いについて、『公的扶助研究』に論文としてまとめた。なお、収集したデータの入力作業も完了した。 2003年12月に制度改革の法案がドイツ連邦議会を通過し、2005年1月から施行されることが決まった。『総合社会福祉研究』にその概要を掲載したが、最終的にどんな制度をつくることになったのか、また、実施に向けてどんな問題が生じてくるのか、引続き検討を進めている。
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