2003年12月にドイツ連邦議会で採択された、「求職者基礎保障(Grundsicherung fur Arbeitsuchende)」(社会法典2編)が2005年1月1日から施行された。これにあわせて、失業保険受給期間を過ぎた要扶助失業者約150万人の生活保障をしてきた「失業扶助」は廃止された。また、最後のセーフティネットとしての「社会扶助」から、就労可能な受給者約100万人が切り出され、新たな「求職者基礎保障」が、要扶助状態にある就労可能な人をまとめて引き受けることになった。他方、「社会扶助」は2003年に施行された「高齢者・重度障害者基礎保障」をそのうちに組み入れ、社会法典12編として再編され、就労不能な要扶助者のナショナルミニマム保障を統括することとなった。 (1)こうした改革を90年代からあとづけ、分析した(「ドイツにおけるワークフェアの展開-稼働能力活用要件の検討を中心に-」『海外社会保障研究』第147号)。 (2)2004年9月に現地調査を行った。ノルドライン・ヴェストファレン州経済労働省、ヘッセン州労働省、ブレーメン州労働省などで、改革の準備状況を聞いた。ハネッシュ教授、シュピンドラー教授、クラマー教授、トゥルーベ教授などの研究者と意見交換をした。 「求職者基礎保障」の実施主体には3つのモデルがあり、05年1月の実施に向け、いずれの形態をとるかを決定している段階であった。いずれのモデルにも法的に不確定な点があることがわかった。また、就労可能かどうかの判断基準が不確定であることもわかった。さらに、「求職者基礎保障」16条が規定する「労働機会の創出」について評価が分かれていることもわかった。 実施直前にもかかわらず基本的な点が解決できていない状況であることが把握でき、そのポイントを整理することができた。これをもとに次年度は、改革実施直後の成果と課題の分析を行うことができる。
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