ドイツでは2005年1月から新たに創設された求職者に対する基礎保障が、要扶助状態にある就労可能な人及びその世帯員をまとめて引き受け、最低生活の保障と活性化を支援することになった。社会扶助は就労不能な人のためだけの最低生活保障制度となった。就労可能かどうかで要扶助者を区分し、最低生活保障制度を活性化の対象とするかどうかでカテゴリー別に再編したわけであり、労働と福祉の両政策分野にまたがる大規模な制度改革が行われたのである。 本研究は、カテゴリー化された最低生活保障制度のうち、就労可能な要扶助者を対象とする求職者に対する基礎保障に焦点を当て、新たな就労支援サービスと失業者活性化施策を検討した。それによって、失業者を活性化させる就労支援サービスの効果を高めるために、新たにケースマネジャを配置し、労働行政機関と自治体福祉機関が別々に行っていた就労支援サービスを「一つの手から」給付するようにしたこと、また、雇用創出対策として、従来自治体が行っていた「就労扶助(Hilfe zur Arbeit)」に代わるものとして、「雇用機会(Arbeitsgelegenheit、求職者に対する基礎保障法第16条3項)」を導入したことを明らかにした。 他方で、受給者の自己責任を明確にし、稼動能力の活用の義務付けを強化したこと、義務の履行という反対給付なしには最低生活保障を受給できないとしたことの問題性も明らかにした。要扶助者がそれに応じて実際に就労すれば、手当の加算や勤労控除による金銭的付加を得ることができるが、逆に、就労義務を果たさない場合、給付額の減額などの制裁措置が強化されたのである。 このように金銭的なインセンティブや社会サービスの拡充によって活性化を図る「ソフトな活性化策」と、就労義務不履行に対する制裁を強めるという「ハードな活性化策」が混在している状況を明らかにした。
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