島々は、それぞれが特有の風情と地理的・文化的特色をもち、フロンティアとしての役割を果たしてきた。台湾においても例外ではない。澎湖や金門、馬祖の島々が、貴重な生態系と伝統文化を保持する地域であると同時に、台湾の歴史において、対外的なフロンティアとしての役割を担ってきた。とりわけ後二者は、中国大陸に対する軍事上の最前線であったが、1990年代以降、軍事的最前線から経済的最前線へと位置づけが変わりつつある。 台湾の島嶼政策の基本は2000年3月に制定、同4月に公布された「離島建設條例」である。この條例の目的は、島嶼の開発建設を進めて、住民の福祉を増進させることであり、そのために産業を発展させるとともに、自然環境を保全し、独特の文化を保存して、生活の質の改善を図ることとされている。離島建設條例では、澎湖、金門及び馬祖地域と中国大陸との間の「試辨通航」(俗称・小三通)を認め、さらにこれら島嶼地域の営業者に係る営業税と輸入関税の免税措置を定めているのが、日本の離島振興法にはないこの條例の特徴である。急速にウェイトを落とした軍事経済から脱却するために、観光が重視され、軍事施設の観光資源化が図られてきている。さらに、大陸とめ間に小三通が2001年1月から始まっている。観光と小三通をテコにした産業開発の努力が、金門や馬祖では見られる。「過去半世紀にわたる戦門島から平和の経貿島への歴史的転変」をめざして、多くの経済発展計画が策定されている。 問題を抱えながらも、中台間で小三通による経済交流が進みつつあるのは歓迎すべきことである。台湾海峡の両岸関係がうまくいくことが、東アジアにおける平和構築の必要要件の一つだからである。
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