研究課題/領域番号 |
15402029
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
笠原 清志 立教大学, 経営学部, 教授 (80185743)
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研究分担者 |
白石 典義 立教大学, 経営学部, 教授 (60171039)
木下 康仁 立教大学, 社会学部, 教授 (30257159)
田中 重好 名古屋大学, 大学院・環境政策研究科, 教授 (50155131)
唐 燕霞 島根県立大学, 総合政策学部, 助教授 (80326404)
中村 良二 日本労働政策研究, 研究機構, 研究員
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キーワード | 外資導入 / 日本的経営 / 労働関係と労使関係 / 工会 / 党組織 / 企業統治 / 株式会社化 |
研究概要 |
今まで、中国に進出した日系企業では、比較的安定した労使関係が維持されていた。しかし、2005年春の反日デモ以降当局が厳しい締め付けをしているにもかかわらず、広州、大連といった地域では、大規模な労働紛争やストライキが発生している。こうした状況が起きる背景には、経済成長に伴い社会構造が流動化し、利害関係の多様化に従来の紛争処理システムでは十分に対応できなくなったことがある。また、私的企業や外資系企業の増大によって、工場や企業という草の根レベルで労使関係が成立し、労働者の権利意識と政治意識の成熟化が促進されてきたことも影響しているといえよう。 本年度は、中国に進出した日系企業の労使関係に関する調査を実施した。調査対象は従業員200人以上、日本側の出資比率51パーセント以上の日系企業829社(住所変更その他による返送23社を含む)でストを経験し、主に「賃金や賞与問題」(74.5パーセント)、「雇用問題」(17パーセント)が下人だったoストの長さは半日以内が34パーセント、1日が38パーセントと比較的短期間で解決している。この間、ストの際に、工会(労組)は問題解決に「大変協力的であった」(12.8パーセント)、「協力的であった」(27.7パーセント)と、日系企業の責任者は、工会活動を一般的には高く評価していることが伺える。中国では、工会とは関係ないところで突発的にサボタージュやストが発生するという特徴があり、その解決に工会が経営側と一緒に対処しようとする傾向がある。 今日、中国では労働契約制の導入によって、国家が主体となり労働者を雇用するという関係は国有企業においてすら終了している。また、工会も集団契約の締結当事者として、従来の役割以上に労働者の利益擁護者としての役割が求められている。また、日本の経営者は、工会以外に労働者の単なる親睦団体である愛工クラブなどを作り、現場の労働者との接点を大切にしているケースもある。今後、中国での工会の労組化に伴い、日本の経験を踏まえた法制度の整備についての援助は、日本と日本企業にとってきわめて重要である。
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