研究概要 |
インド及びバングラディッシュにおいて遺伝資源、伝統的知識がいかに保全され、また研究開発に活用されているかについての現地調査を行なった。バングラディッシュにおいては、Institute of International Strategic Studies, Bangladesh Agricultural University, University of Dhaka,環境省、NGOであるDEBTEC(Dvelopment of Biotechnology & Development)を訪問し、関係者にインタビューを行なった。バングラディッシュは、LLECと言われる途上国で唯一、医薬を自給している国であるが、これまでは、医薬品開発において伝統的知識の活用はあまり行なわれてこなかった。しかし、DEBTEC中心に、遺伝資源に係わる伝統的知識のデータベース化が行われ始めている。一方、インドにおいてはCouncil of Science & Industrial Research, Centre for Policy Researchを訪問し、インドの国家的プロジェクトであるTKDLの進捗状況を確認しつつ、医薬品開発における伝統的知識の活用例についての聞き取りを行なった。インドにおいては、遺伝資源に係わる伝統的知識がAyurveda等(Unani, Siddha, Naturopathyを含む)の伝統医薬において既に体系化され、それをもとに知識がデータベース化が進んでいるが、その知識を利用してきたコミュニティの特定自体は困難なものが多く、また、複数のコミュニティに跨っていることも多いために、直接の利益配分システムという点ではまだ課題があることがわかった。インド国立の研究機関が進めている遺伝資源マネジメンドにおいては、そこから得られる収益は一先ず国家に還元され、その後、国家の政策として、環境保全を考慮に入れて、特定地域を保護しようというのが現在の実態であると思われる。利益配分システムの構築を国際的にも主張しているインドではあるが、国内の特定地域への直接の利益配分メカニズムの構築の検討は現在では進んでいないのが現状である。なお、インドのCSIR、バングラディシュのDEBTEC、スリランカのコロンボ大学から専門家を招き、南アジアのABSに関わるセミナーを実施した。
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